【ネタバレ】玄管と耶利の主公の正体について。(十二国記『白銀の墟 玄の月』感想/考察)
\この記事は十二国記『白銀の墟 玄の月』の重大なネタバレを含みます/
※抜けがあったので色々と書き加えました。
(2020年1月7日:悩んだ末、津梁に関する考察も追加しました)
目次
/長っ\
大前提
琳宇にある石林観の沐雨に、鴣摺という青鳥を飛ばしていた謎の人物です。
玄管は本名ではありません。沐雨が勝手に付けたアダ名です。
『必ず黒(玄)い竹の筒(管)を使う』から、音読みで『玄管』と呼ばれています。
つまり『玄管という名前の単独キャラクター』ではありません。
玄管は間違いなく既存の登場人物の『誰か』です。
玄管が飛ばした青鳥 | |||
---|---|---|---|
受取人 | 宛先 | 時期 | 内容 |
朱旌 | 沐雨 | 6〜7年前 |
|
梳道 | 沐雨 | 阿選践祚直後 |
|
梳道 | 沐雨 | 恵棟出発後 |
|
長天 | 李斎 | 帰泉ら出兵直後 |
|
※恵棟のところが抜けていたので追記しました。
作中で「驍宗の臣下のうち、複数人は黄朱との繋がりを持っている」とされています。
名前が明かされているのは『驍宗・巌趙・臥信』と『琅燦・耶利』ですが、当然他にも隠れている可能性があります。
また、耶利は琅燦のことを「最初に驍宗様に預けられた人物」としています。そして耶利自身は驍宗のことを全く知りません。
つまり耶利は琅燦の次に驍宗に預けられた人物ではない。
ということは、琅燦以外にも黄朱出身で驍宗の下で働く正体不明の人物がいることは確定です。
ただしその人物が白圭宮で働いている確証はなく、無名のモブキャラクターとして里で過ごしている可能性もあります。
また、これら『黄朱出身の人物/黄朱と繋がる臣下』が必ずしも物語に絡んでいるとは言えません。ただ単に世界観が書かれているだけ、という可能性は大いにあります。
とはいえ、こうした伏線がある以上、『玄管=作中では一切触れられていないものの実は黄朱出身/もしくは黄朱と繋がりを持つ主要人物』の可能性も否めません。
以上が大前提。
- 玄管はアダ名
- 驍宗の臣下には黄朱と繋がる人物がいる
(=玄管の可能性あり)
玄管について
玄管の特徴
次に、玄管の特徴を箇条書きで書きます。
- 必ず黒い竹の筒を使う
-
鴣摺という妖鳥を使う
▶︎過去に一度でも『高官』か『将校』以上の地位に就いている。 -
軍で使う薄い紙を使う
▶︎ただし軍以外でも同じ紙が使われている可能性はある。 -
妙に角張った細かな文字を使う
▶︎男性的・繊細・神経質・几帳面・字書きに慣れていない暗示? -
朱旌に鴣摺を飛ばせる
▶︎ただし耶利が代理で飛ばしていた場合、玄管自身に朱旌との繋がりはなくてもよい。 -
友尚軍(長天)に鴣摺を飛ばせる
▶︎このとき耶利は一切関与していない。 -
李斎に鴣摺を飛ばせない
▶︎戴の救出には李斎が必要だと理解している人物。ただし李斎宛の手紙を李斎本人に飛ばせなかった。 -
おそろしく正確な情報のみ届ける
▶︎王宮内部の情報に聡い。 -
瑞雲観の動きを事前に知っていた
▶︎道士・神農・朱旌・冬官などの情報源を持つ可能性がある。 -
阿選の践祚を信じていなかった
▶︎『新王阿選』を信じた人間ではない。 -
恵棟が文州候になったことを知っている
▶︎阿選王朝なら誰でも知っている気もしますが一応。
また、恵棟が泰麒に味方していることを察している(知っている)。 -
密命を帯びた軍の動きを把握している
▶︎ただし泰麒にまで情報が飛んでいる上、当の阿選も隠す気がないので秘匿性は低そう。(阿選王朝にいれば誰でも簡単に知ることができた可能性がある) -
六官長の会議の場にいた
▶︎ただし会議に潜入し、盗み聞きしていただけの可能性もある。(ちなみに処刑されたのは瑞州の六官長です) -
驍宗が処刑される際、奉天殿の隅にいた
▶︎奉天殿中央に控えていた人物、奉天殿の外にいた人物ではない。 -
耶利の主公とは別人の可能性がある
▶︎『玄管=耶利の主公』は確定ではありません。
ただし玄管と耶利の主公が仲間だった可能性もあります。
恵棟・午月・品堅など
恵棟・友尚
案作・耶利・駹淑・正頼・品堅・嘉磬・成行・杉登など
※恵棟のところが抜けていたので追記しました。
▼鴣摺
稀少な妖鳥。
基本的に夏官(軍)の管轄のため、軍の将校か高官しか持てない。
一度でも鴣摺自身が面会したことのある人物か、指定した場所にしか飛ばせない。
▼将校
一般的に少尉以上(指揮官クラス)の軍人を指す。
十二国記世界の場合『旅帥以上(将軍・師帥・旅帥)』が妥当だと思う。
▼朱旌
国籍を持たず、芸や商売をしながら諸国を回る浮民のこと。
黄朱も朱旌に入る。
▼長天
友尚軍の旅帥。
土匪との戦で敗北し、霜元軍に加わったところで何故か李斎宛の青鳥が玄管から届いた。
『言っていたところで、正院の堂室に長天が駆け込んできた。(略)
鴣摺の足から外された細い黒竹の筒。──噂に聞いた、玄管とはこれのことか。
「沐雨殿に確認していただくべきなのかもしれないが──しかし、なぜ李斎に?」
筒の中から細く巻かれた紙を取り出す。それは軍で使うのと同じく、透けるほど薄い紙で、妙に角張った細かな文字が書き付けられていた。(略)阿選軍のうち機動力の高い空行師一両が密命を帯びて鴻基を出た、とあった。』
(霜元 / 白銀の墟 玄の月)
- 密命:内々に下された命令
- 薄い紙:7年前、苛立った英章が放り投げたものと同じ種類の紙
▼六官長
天官長(立昌)、地官長(哥錫)、春官長(懸珠)、夏官長(叔容)、秋官長(橋松)、冬官長(?)のこと。
奉天殿内予想図
※玉座は奉天殿の中央に位置しています。
『奉天殿の中央には玉台が三つ並んでいる。
(略)
玄管は殿内の隅、暗がりに身を置いて、正面の扉が一斉に開かれるのを見ていた。
(略)
巌趙もまた暗がりに身を置いていた。奉天殿を支える柱の陰、すぐ近くには阿選のいる玉台が見え、玉台の下、背後の暗がりに控えた琅燦のそばに佇んでいる。
(地の文 / 白銀の墟 玄の月)』
- 玉台の下、背後の暗がり
- 巌趙のそば
- すぐ近くに玉座が見える
- 琅燦のそば
- 殿内の隅の暗がり
- 扉が正面にある
この描写から、
- 奉天殿内部にいなかった人物
- 奉天殿の中央(玉座周辺)にいる人物
──は、玄管ではないと推察できます。
(琅燦については一旦保留)
『奉天殿の中央』は阿選・泰麒のいる玉台を指していますから、『玄管のいる場所=玉座・玉台から離れた場所』と考えられます。
(ただし誤植の可能性もアリ)
玄管の候補者
上記の特徴から、玄管となり得る人物を列挙します。
-
立昌(天官長)
浹和にスパイを頼んでいた50代の男。
驍宗王朝では春官庁の末席にいた。 -
哥錫(地官長)
朝議で様々な発言をしていた。 -
懸珠(春官長)
女性官吏。
朝議で様々な発言をしていた。 -
叔容(夏官長)
痩身の男。
驍宗王朝では阿選軍の軍司だった。未だに阿選軍を『品行方正』として誇りに思っている。 -
橋松(秋官長)
おそらく嘉磬らの処刑を執行した人物。 -
?(冬官長)
名前なし。
会議に出席しないこともある。 -
琅燦(太師)
表面上の地位は低いものの、実際には冬官長の実権を握っている。
ただし処刑場で玄管が控えていた場所(奉天殿の隅)と、琅燦がいた場所(中央にある玉台の下)が異なるようにも読める。 -
伏勝(瑞州司士)
元阿選軍の旅帥で、瑞州の司士。 -
皆白(元天官長)
嘉磬の上司で、鳴蝕後行方不明になっていた元天官長。
どこかに潜伏し、驍宗王朝復活の機を窺っていた。 -
津梁(禁軍)
元凱州帥の将軍で、謀反後に徴兵された有能兵士。
あまりに存在感がないので記事投稿当初は除外していたんですが(笑)、一応書き加えました。(2020/01/07)
『──李斎が生きていた。
玄管と呼ばれる者は、静かにその場を離れた。(略)
反民を見逃すことなど、阿選はすまい。だが、これまでのような誅伐はできない。泰麒という重石があるからだ。(略)
──李斎には生き延びてもらわなければ。』
(玄管 / 白銀の墟 玄の月)
ということで、阿選と六官長の会議の場にいなかった『琅燦・伏勝・皆白・津梁』もとりあえず玄管の候補に入れました。
他の人物が候補に入っていない理由は下記の『絶対に玄管ではない人物』参照。
この『立昌・哥錫・懸珠・叔容・橋松・琅燦・伏勝・皆白・津梁(+冬官長)』中の一体誰が玄管になり得るのか?という考察はのちほど。
そこまでとぶ (ページの下まで飛ぶ)
絶対に違う人物
次に「絶対に玄管ではない人物」を挙げます。
以上。
玄管と耶利の主公
さて、「玄管は誰か?」を考えるにあたり重要になるのが『耶利の主公の正体』です。
耶利は1巻で何者かに青鳥を飛ばしていました。しかしその人物は結局明確にされていません。
雲海の下を飛び、鴻基の北に向かった
(青鳥を飛ばす際、耶利が鴻基の街を見下ろしているため雲海の下で確定です)
当時鴻基の北にいた主要人物は
『沐雨・李斎・霜元・英章・赴葆葉・博牛・敦煌・建中(+馬洽平)』です。
ただのミスリードのためだけに「黄朱出身である耶利が王宮から無名のモブキャラに中身のない報せをする」のは不自然ですから、『耶利は鴻基の北にいる主要人物に青鳥を飛ばした』と考えて間違いありません。
ですので、ここはストレートに玄管の代理で石林観の沐雨に青鳥を飛ばしたと考えて良いと思います。
(博牛や赴葆葉、英章に飛ばしていた可能性も否めませんが、検証の仕様がないので除外します。)
ということで、玄管の正体は
(1)耶利の主公 もしくは
(2)耶利の主公と手を組んでいる者 と考えられます。
耶利の主公について
耶利の主公の特徴を箇条書きにします。
-
愛国心がある
戴を救いたいと真剣に考えている。
また、驍宗が王の器であると信じている。 -
阿選を兇賊と吐き捨てる
新王阿選をまるで信じず、阿選が王になるのはあり得ないと断言した。 -
項梁のことを知らない
項梁の名すら知らない。 - 巌趙の麾下ではない
-
雲海を見下ろす部屋に入れる
雲海を見下ろしながら耶利と会話をしている。 -
常人離れした思考を巡らす
耶利や巌趙の理解が及ぶ人間ではない。また、泰麒の奸計にもいち早く気付いた。 - 堂々と泰麒を守れない
案作・張運
恵棟・午月・品堅・叔容など
友尚
杉登
張運・士遜・平仲・浹和など
阿選・張運
玄管=耶利の主公の場合
『玄管』と『耶利の主公』が同一人物の場合。
上述したように、玄管は『立昌・哥錫・懸珠・叔容・橋松・モブ冬官長・琅燦・伏勝・皆白・津梁』の誰かだと思っています。
この内、冬官長は描写が少なすぎるので除外します。
ちと悩みましたが、凱州出身の津梁も一応候補に追加しました。
以前の投稿記事も読んでくださった方にはややこしい変更になってすみません。
鴣摺 | 長天 | 李斎 | 奉天殿 | 兇賊阿選 |
---|---|---|---|---|
鴣摺: 鴣摺を飛ばせるか |
||||
長天: 長天に鴣摺を飛ばせるか |
||||
李斎: 李斎に鴣摺を飛ばせないか |
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奉天殿: 奉天殿の隅にいたか |
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兇賊阿選: 阿選を兇賊と呼ぶか |
||||
◯:当てはまる △:どちらとも言えない ×:当てはまらない ?:不明 |
1人ずつ検証
立昌について
鴣摺 | 長天 | 李斎 | 奉天殿 | 兇賊阿選 |
---|---|---|---|---|
◯ | ? | ◯ | ◯ | ? |
天官長の立昌。50がらみの男です。
彼は驍宗政権下では春官庁の府吏でした。府吏とは春官庁の中でも最下位の末席です。
そんな末端構成員の立昌がなぜ天官長にまで昇進したのかというと、元上司の張運が「無能で使いやすい男」もしくは「自分に逆らわない者」として抜擢したからだと予想できます。事実、立昌のことは『異例の大出世』『張運の側近ともいえる官吏』と作中で明記されています。
立昌は浹和に間諜(スパイ)を命じていました。
一見するとネチネチした嫌なヤツですが、これは突然現れた泰麒を隠れて守るために必要な事だったとも考えられます。
現に立昌は途中から浹和の報告を必要としていません。
これは耶利が来たタイミングと微妙に重なっています。
『最初は報告せよとせっついてきた立昌だったが、いつのころからか、それが間遠になった。気を利かせた浹和が折につけ立昌を訪ねるのだが、次第に対応がいい加減になってきている。』
(浹和 / 白銀の墟 玄の月)
立昌が泰麒の事情を探っていたのは最初だけです。
普通に読むと「無能な立昌はスパイ行為にもすぐに飽きたんだな」と読み取れますが、耶利を泰麒のもとに送ったから余計な手出しをやめた、と深読みすることもできます。
『「台輔の処遇を篤くせよという声がある。いつとは分からないが、近々侍官が増やされることにはなるだろう。受け入れる台輔はこれを渋っている。(略)項梁とかいう英章軍師帥がそれだ。王宮の外で台輔に巡り会い、戻って来られるのに随伴してきた。(略)台輔の周囲はその人選に苦慮している」』
(耶利の主公 / 白銀の墟 玄の月)
さて、作中において泰麒が項梁との間柄を明かしたのは黄医の文遠の前でだけです。
泰麒は衆目がある(おそらく浹和がいる)場所で、『阿選に角を斬られたこと』『項梁は英章軍にいたこと』『王宮の外でたまたま巡り会い、ずっと泰麒を護衛していたこと』を文遠に話しました。
『「そもそも体調を崩しておいでですか。ずいぶんと弱っておられる」
「これでもましになったのです」
「にしても、これは酷い。ひょっとして穢瘁でございますか。阿選が何か」
(=つまりこのとき泰麒の角は治っていない)
いいえ、と泰麒は首を振った。
「これは阿選とは関わりのないことです」言ってから、軽く首を傾け、「そう──直接的には関係ない。鳴蝕で故国に落ち、そこで病みました」
「阿選めが、台輔を襲ったと」
「角を斬られました。ですから、戻ってくることができなかったのです」
おお、と文遠は両手で口を覆った。
「なんということを。角は麒麟の生命の源でございます。それを斬る、などと。しかも故国で病まれたのですか。穢瘁さえなければお怪我も治ったことでございましょうに」』
(地の文 / 白銀の墟 玄の月)
『文遠は、項梁の身柄を問うように泰麒を見た。泰麒が、
「英章の軍にいた項梁です。たまたま巡り会い、ずっと私を護衛してくれました」
「左様でございましたか」言った文遠は、感謝の意を伝えるように項梁に向かって深く頷いた。
(地の文 / 白銀の墟 玄の月)
これらの会話を浹和が盗み聞き、立昌に報告していた場合、『泰麒は角を怪我していること』『項梁という英章軍の人間が付いていること』『泰麒と項梁は王宮の外で巡り会い、随伴してきたこと』『泰麒が項梁を信頼していること』──を、立昌は知ることができます。
つまり耶利は『泰麒の角が斬られていること』を主公経由であらかじめ把握していた、と考えることもできます。(事前に泰麒が伝えていただけ、耶利がなんとなく察しただけの可能性もありますが。)
また、作中で泰麒に対し、人員増加の提案がなされた回数は合計2回のみです。
▼1度目:阿選に斬られた後
泰麒が阿選に腕を斬られてすぐのことです。
次蟾避けの木札を阿選から渡された恵棟は泰麒のもとに参じ、人員増加について提言します。しかし恵棟を警戒する泰麒・項梁から「(恵棟すら)必要ない」と拒絶されてしまいます。
▼2度目:恵棟が州宰になったとき
泰麒の独断で州宰に任じられた恵棟は、「何か必要なことがあれば言ってください」と泰麒の許しを得てようやく「せめて人員を増やすことを許してほしい」と告げます。
このとき泰麒は少し渋りますが、結局その場で人員の追加を了承しました。了承を得た恵棟は速やかに「前もって人選をしていた」「皆白様の右腕だった方がお持ちの私兵を貸してくださる」と新しい臣下の説明をし、その日のうちに耶利を派遣します。
つまり、耶利の主公は1度目の会話の内容を正確に把握していたと考えられます。これは確定ですね。
この1度目の会話を立昌は知ることができました。
つまり立昌は『阿選と琅燦以外で唯一泰麒の状態を正確に把握することができた高官』です。
耶利の主公が立昌だった場合、主公が泰麒周辺の内情を正確に把握していた理由にも筋が通ります。
とはいえ、「立昌が泰麒周辺の情報を流した」と分かる明確な描写は作中には一切ないのです。
そもそも張運が立昌に間諜を命じた描写、張運が泰麒に間諜を置く描写すら作中にはありません。
作中で張運が立昌に命じたのは、「泰麒が本物かどうか確認せよ」というものだけです。間諜云々は作中では命じられていません。
「浹和は張運のスパイ」「張運はスパイを立てている」というのは全て恵棟らの想像です。浹和がスパイなのは当たっていますが、彼女は張運が直々に仕込んだスパイではありません。
(そもそも途中で浹和の報告を無視している点から、浹和は張運の差し金で仕組まれた間諜ではないと思います。立昌が浹和に間諜を命じたのは、『張運に媚を売るため』か『泰麒を守るため』のどちらかでしょう。)
また、「さすがに巌趙の身柄までは、私では動かせない」という主公の言葉も天官長の立場なら納得できます。
泰麒の護衛の人事権は夏官長の叔容にあります。叔容以外の人間は『複数の人を介し、私兵だということで紛れ込ませる』のが限界でしょう。
一見すると、立昌は「朝廷の末席にいた50代の無能な官吏」です。事実、彼は驍宗王朝では春官庁の末席にいました。
しかし驕王王朝〜驍宗王朝の春官庁及び阿選王朝では、『優秀な人材ほど蹴落とされる』とされています。士遜が泰麒に仕掛けていた『過剰な忠義』がその正体ですね。
士遜のような人間を操り、過剰な忠義を繰り返していたのが立昌の元上司であり現冢宰の張運です。張運は自分よりも有能な官吏をことごとく排除し、自分に都合の良い職場を作り上げていました。
『張運の得意な「過剰な忠義」だ。冢宰になる前、自分よりも上位の者を蹴落とすのによく使っていた手だった。(略)結果、張運が手を下すまでもなく、誰かが標的を蹴落としてくれる。蹴落とされたとき、多くの者はこれに抗う気力を失っている。
(案作 / 白銀の墟 玄の月)
──ということは、驍宗王朝の春官庁で末席に追いやられていた立昌は必ずしも無能とは言えないわけです。むしろその逆で、潜在能力的には極めて優秀だった可能性すらある。
阿選や琅燦から「無能」と蔑まれる六官長の中で、唯一『実は無能な官吏を演じているだけかもしれない』と客観的に推理できるのが立昌です。
夏官長の叔容は元阿選軍軍司のため単なる無能ではありませんが、友尚に皮肉たっぷりの指摘をされるまで自分が一体何をしているのか自覚していなかった節があります。
つまり耶利の主公=玄管の場合、その正体は立昌と考えることも出来ます。
『耶利と主従関係になること』『瑞雲観の動向を把握できたこと』『巌趙と裏で繋がっていること』は「立昌が密かに黄朱と繋がっていたから」という理由で事足りますが、「なぜ友尚麾下の長天に鴣摺を飛ばせたのか?」という謎だけは残ります。
ということで保留。
哥錫について
鴣摺 | 長天 | 李斎 | 奉天殿 | 兇賊阿選 |
---|---|---|---|---|
◯ | ? | ? | ◯ | ? |
地官長の哥錫。
彼は時々泰麒の意を汲むような発言をしていますが、だからといって玄管だと確信できるほどのものではありません。
また、哥錫も立昌同様「なぜ友尚麾下の長天に鴣摺を飛ばせたのか?」という謎が残ります。
謀反前は一体どこで何をしていたのか、内心では何を考えているのか──がまるで何も分からない哥錫は、「情報が少なすぎて何とも言えない」キャラクターですね。
よって保留。
懸珠について
鴣摺 | 長天 | 李斎 | 奉天殿 | 兇賊阿選 |
---|---|---|---|---|
◯ | ? | ? | ◯ | ? |
春官長の懸珠。女性官吏です。
懸珠も哥錫同様、さりげなく泰麒に優勢となる発言をしています。
とはいえ、哥錫・立昌と同じく「なぜ友尚麾下の長天に鴣摺を飛ばせたのか?」という謎が残ります。
よって保留。
叔容について
鴣摺 | 長天 | 李斎 | 奉天殿 | 兇賊阿選 |
---|---|---|---|---|
◯ | ◯ | ◯ | ◯ | × |
夏官長の叔容。痩身の男です。
彼は元阿選軍の軍司で、未だに阿選軍を誇りに思っている阿選の麾下です。
『阿選軍は軍紀を重んじる。(略)品行においては常に驍宗軍よりも上だと評価されてきた。それはときに驍宗が権威に逆らうことがあった(=轍囲の乱など)からで、阿選軍にはそのような不遜がない。軍としての立場を弁え、決して出過ぎることがないと高い評価を得てきた。(略)ゆえに自分たちの面目に泥を塗られたように感じていた。』
(叔容 / 白銀の墟 玄の月)
「理は轍囲にあり」と、驕王の命令より仁義を優先した驍宗軍を叔容は不遜と考えています。
これが叔容の虚言ではないと分かるのが下記の会話。
『「もはや簒奪者ではない。阿選様は践祚なさる。天にも認められた王だ」
「では言葉を変えようか?反民があると聞けば無関係な民まで殺してきた権力者」
「──友尚!」
咄嗟に感じたのは反発だった。友尚の発言は聞き捨てならない。』
(叔容 / 白銀の墟 玄の月)
「阿選は天にも認められた王だ」という意見を否定されて、咄嗟に反発を感じた。
仮にこの言動が友尚を守るため(阿選の悪口を誰かに聞かれることを危惧したもの)であれば、咄嗟に出てくる感情は反発ではなく焦りや緊張のはずです。
つまり叔容の「天にも認められた王」という言葉は本心と読み取れます。
そんな男が「玉座には驍宗様にいてほしい」と発言し、阿選を「兇賊」と吐き捨てるのは極めて不自然です。
まして忠義より仁義を重んじた驍宗を「不遜」と罵る男が、主人である阿選の意に反して李斎を救おうとするのも不自然。
よって、叔容は耶利の主公ではない。
また、おそらく玄管でもないと思います。
(十二国は「永遠に専制政治から抜け出せない世界」なので、この考え方が軍人に根付くのは必然だったのだと思う。たぶん景王陽子の「私は民の1人1人に王になってほしい(権力に従うイエスマンではなく、1人1人が自分の力で考え、それが尊重される民主主義のような世界でありたい)」という思考の方がよっぽど珍しいのかな、と。)
その上で「主従関係は信頼関係があってこそ」と涙を零した恵棟、「我々麾下には主人の蛮行を止めなかった罪がある」と達観している友尚、「窮寇を守る」と号令した品堅、「理は轍囲にあり」と断言した驍宗が(陽子同様に)異端なのであって、ただただ『物事の善悪よりも主人に功を立てること』を優先した阿選、叔容、成行らは『十二国世界の常識から抜け出せなかった一般人』の象徴なのかもしれません。
※ちなみに恵棟を泰麒のもとに送り込んだのは叔容ではなく阿選です。
橋松について
鴣摺 | 長天 | 李斎 | 奉天殿 | 兇賊阿選 |
---|---|---|---|---|
◯ | ? | ? | ◯ | ? |
秋官長の橋松。
秋官長は罪人を裁くのが仕事です。
嘉磬と瑞州六官長を処刑し、伏勝・午月ら瑞州小臣を泰麒から引き離したのは秋官長の橋松です。
(といっても、橋松は阿選や案作の指示、張運の嘘に乗っかっただけでしょうが)
嘉磬が秋官に捕まってから処刑されるまでには多少の時間がありました。その間に嘉磬救出のための何かが起きた描写はありません。
耶利を遣わす際に協力してくれた嘉磬を黙って見殺しにする人間を耶利が主人として敬うとも思えないので、橋松は耶利の主公ではないと考えられます。
また、戴を救おうとしている玄管と、泰麒から伏勝・午月らを引き離した橋松が同一人物とは思えないため玄管でもないでしょう。
琅燦について
鴣摺 | 長天 | 李斎 | 奉天殿 | 兇賊阿選 |
---|---|---|---|---|
◯ | △ | △ | △ | ◯ |
物語のキーパーソンとなっている琅燦。
琅燦は『知的好奇心に溢れた奔放な女性』で、『冬官長の実権を握り冬官の保護を徹底していた』とされています。
これらの描写をストレートに読み取るなら、琅燦は『研究者気質で知識・技術の損失を嫌う性格』と考えられます。対して、深読みをするなら『周囲に嘘を吐き続け、驍宗のために暗躍していた人物』ですね。
そんな琅燦ですが、「もしも瑞雲観の動向を事前に把握していたなら、彼女は絶対に瑞雲観を守ろうとした」だろうな、と思うのです。
「瑞雲観を止めた方がいい」という玄管の真意が「瑞雲観の知識と技術を守るため」にしろ「民を守るため」にしろ、瑞雲観の一件は『琅燦が玄管として動き始める理由』としては非常に納得できるな、と思います。
(玄管の最初の活動は瑞雲観の保護。)
また、琅燦は元冬官長という役職の他に驍宗軍の幕僚も経験しています。そのため鴣摺(+軍で使う薄い紙)を持っていても何ら不思議ではありません。
さらに日常的に阿選らの会話を盗聴していたことから、「李斎が生きていた」と判明する六官長の会議も例の如くどこかに身を潜めて盗聴していた、と推理することができます。
──が。
琅燦が玄管&耶利の主公だった場合、いくつか疑問が浮かびます。
玄管は奉天殿の隅にいました。
対して、琅燦は奉天殿の中央・玉台の下にいました。
(『隅』と『中央』は真逆の意味)
『奉天殿の中央には玉台が三つ並んでいる。
(略)
玄管は殿内の隅、暗がりに身を置いて、正面の扉が一斉に開かれるのを見ていた。
(略)
巌趙もまた暗がりに身を置いていた。奉天殿を支える柱の陰、すぐ近くには阿選のいる玉台が見え、玉台の下、背後の暗がりに控えた琅燦のそばに佇んでいる。
(地の文 / 白銀の墟 玄の月)』
※玉座は奉天殿の中央に位置しています。
もしも『隅』という表現がなければ神の視点を用いた小説ならではの叙述トリックかな、とも思えるのですが、どうにも「中央にある玉台の下、背後の暗がり」と「隅の暗がり」を同じ場所とするのは無理がある気がします。
泰麒がいる玉台の中は最低でも12人を収容できる広さがありますから、阿選のいる玉台も最低限同じ広さが確保されていると考えられます。
それほど大きな玉台の下、まして『奉天殿の中央』と事前に述べた場所を、真逆の意味である『隅』と表すのは不自然に思うのですが、あくまで言葉の綾かもしれません。(もしくは誤植)
7年前、李斎は偶然出会った二声氏(白雉の管理をする役職の人)から阿選の謀反を知らされました。
この事実を李斎は霜元と芭墨にのみ青鳥で伝えますが、すぐに阿選にバレて大逆人の冤罪を被せられます。
▼霜元:元瑞州師将軍
文州の高卓で李斎と合流。
▼芭墨:元夏官長
鳴蝕後、逃げた先の委州で処刑されたらしい。
李斎いわく「霜元も芭墨も信頼できる人にしか話さない」つまり「驍宗側に裏切り者がいる」。これは事実だと思います。
(=少なくとも張運・立昌・阿選麾下ではない)
また、今作で李斎を裏切った人物は「霜元周辺の人物(英章等)」ではない、と判明しました。つまり裏切り者は芭墨経由で李斎の密告を知った人物=鳴蝕直後に白圭宮にいた人物の誰かとなります。
鳴蝕直後、白圭宮にいた驍宗配下の人物は『正頼・巌趙・皆白・宣角・花影・琅燦・潭翠・嘉磬・臥信』。このうち琅燦以外の全員が「命を狙われている」か「拘束&拷問を受けている」か「人質を取られている」状態です。
また、謀反直後は「阿選王朝に反発した者を張運がことごとく排除した」と明かされています。ということは、阿選に有利となる情報を流した『裏切り者』を張運らが追放・処罰するのは非常に不自然です。
よって、7年前に李斎を裏切った人物は琅燦だったのではないかな、と考えられます。
さて、琅燦が玄管だった場合、7年前に李斎を切り捨てた張本人のくせに「李斎には生き延びてもらわなければ」と独白するのは不自然です。
仮に黄朱出身の琅燦が『独善的な忠義のために仲間を容赦なく利用して切り捨てる性格(※黄海で生きる黄朱は「生き残る可能性が高い者を生かすために他者を囮にする」習慣がある)』で、『7年前は李斎が不要だったから囮に仕立て上げたものの、今になって必要になったから助けようとした』とします。
しかしそうなると「琅燦は敵ではない」という泰麒の解釈はあまりに危険すぎる訳で、それなのに巻末イラストで驍宗王朝の繁栄が暗示されたことに違和感を覚えるのです。
むしろ『驍宗が琅燦という摂理外の存在を国に招き、それを泰麒が許したことが驍宗王朝の最大の失敗(=戴王朝はすぐに斃れた)』という胸糞展開だったら物語としては筋が通っていると思うんですが、それは巻末イラストで公式に否定されている。だからこそ、モヤモヤするわけで。
(もっとも、そんな最悪のバッドエンドは絶対読みたくないですが笑)
まあこの辺はあくまで考察というより個人の感想ですね。
驍宗自身が狙われていたにも関わらず「なぜ驍宗ではなく友尚麾下の長天に手紙を飛ばしたのか?」という疑問。
もしも琅燦が玄管だったなら「友尚軍の旅帥には青鳥を飛ばせるのに、かつての将であり主公でもある驍宗に青鳥を飛ばせない理由/飛ばさない理由」がいまいち分かりません。
また、手紙で「空行師が主上の身柄を確保するため動いた」と直接的な表現をしなかった理由も謎です。
大量の官吏を病ませていた、鳩のような妖魔・次蟾。
次蟾は泰麒の居住空間にも3匹潜んでおり、平仲・文遠・徳裕・浹和を病ませました。
耶利が次蟾の存在に気付いたおかげで項梁は危機一髪助かりましたが、項梁も危ないところだったとされています。
もしも琅燦が耶利の主公なら、一体なぜ泰麒の側にも次蟾を仕向けたのでしょう。
「泰麒のそばには項梁1人しかいない。護衛が1人では身が持たない」と考えて「戴を救うため泰麒を守ってほしい」と耶利を派遣した主公が、泰麒が唯一信頼する護衛の項梁までも廃人にするのは不自然です。『琅燦=耶利の主公』だった場合、王宮内部に次蟾がいることを前もって耶利に伝えていなければおかしい。
また、『戴を救いたい主公』が文州州候になった恵棟を守らなかった点も不自然です。
(妖魔を用意したのは琅燦1人ですから、次蟾の存在を琅燦が知らないことはあり得ません)
琅燦が玄管&耶利の主公だった場合、「私は戴を救いたい。国を救い、民を救い、その頂点にある玉座には驍宗様にいていただきたい」と琅燦が言っていたことになります。
しかし執拗に阿選を唆し、謀反前に妖魔を与えたのは琅燦です。驍宗を玉座から切り離した張本人のくせに「玉座に座ってほしい」とは支離滅裂すぎます。
仮に『全ては驍宗王朝の不穏分子である阿選を正攻法で排除するため』だったなら、阿選が泰麒に斬りかかった段階で「謀反アリ」として阿選を討てば済んだ話です。
泰麒に指令を残し、謀反の現場を泰麒自身(+泰麒の指令)に目撃させる。そうすれば阿選の謀反は確実なものとして天帝及び臣下全員に認知されたわけです。
つまり、天の摂理を動かさず正攻法で阿選を討つことは7年前にもできた。でもそうしなかった。
一連の謀反が『驍宗の苛烈さ、性急さに付いていけない一部の臣下の意識を改善するため』だったとしても、この方法では根本的な解決には至りません。なぜなら臣下の不満は驍宗の性格に由来するものだからです。
阿選王朝の劣悪な政治を見て「やっぱり王は驍宗様が良い!」と臣下に思わせたとしても、それが10年先、30年先まで続く保証はありません。むしろ驍宗自身が変わらないことにはいつか必ずまた同じ問題にぶち当たる。
阿選1人を排除したところで、いずれ第二、第三の阿選が生まれるのは必然です。
──にも関わらず、なぜ天才的に賢い琅燦は目先の阿選に固執したのか。
『阿選を倒せば驍宗王朝は安寧』というのは早計すぎます。それとも阿選のような謀反者予備軍が現れるたびに、地道に1人ずつ誑かして排除していくつもりなのか。
もしも琅燦が驍宗の性格を変えるために謀反&幽閉を目論見たのなら一応は筋が通ります。しかし『琅燦=子供を暗い押入れに閉じ込めて躾ける母親的存在』と推理できる描写・伏線は皆無でした。
琅燦は『西王母に挑戦するキャラクター』のようには描かれていましたが、『西王母になろうとしたキャラクター』ではないんじゃないかな。「私が驍宗様を理想の王様にしてやるぜ」みたいな。そんなキャラには見えない。
項梁が「なぜ琅燦は驍宗を裏切ったのか」と悩んだとき、耶利は「分からないが、たぶん優先順位が違うんだと思う」とサラリと言ってのけました。
「黄朱は項梁たちと優先順位が違う。王や麒麟や国はさほど重いものじゃない」と。
直後、不安になった項梁に「お前もそうなのか」と問われた耶利は「心配しなくても台輔の御身は守る。頼まれたことでもあるし、私もそうしたいと思うからな」と苦笑しながら答えます。
仮に琅燦が耶利の主だった場合、この会話の流れは少し変です。
「琅燦は裏切り者じゃないか」と疑う項梁に、耶利は遠回しに「そうかもしれない」と同意しました。そして「たぶん琅燦にとって国や麒麟はさほど大事じゃない」と、琅燦が不利になる発言をします。
(この会話のせいで終盤、項梁は琅燦を捕らえようとします。琅燦が主公だった場合、もっと他に言いようがあったはずです。)
また、耶利は「琅燦にとっておそらく麒麟はさほど大事じゃない」と言った直後に「泰麒を守れと主人に頼まれている」と告げました。
この『耶利が考える琅燦の人物像(泰麒はさほど大事じゃない)』と『主公の人物像(泰麒はとても大事なもの)』は、やっぱり天と地ほどもかけ離れています。
「じゃあ琅燦は何者なのか?」という疑問の考察はこちら。
伏勝について
鴣摺 | 長天 | 李斎 | 奉天殿 | 兇賊阿選 |
---|---|---|---|---|
◯ | ◯ | ◯ | △ | ? |
元阿選軍旅帥で、誰の麾下か分からない伏勝。
友尚軍と親交があり、李斎には鴣摺を飛ばせず、奉天殿の隅にいてもおかしくない人物です。
(十二国記の軍隊の階級は 将軍>師帥>旅帥 の順)
伏勝はおそらく『終盤で巌趙と一緒に正頼を逃した阿選軍の兵士』ですが、伏勝らが最初から正頼の警護をしていたとは断定できません。
『正頼を警護するために集まっていた阿選軍の兵士が、巌趙に協力したと聞く。彼らはそこに集められる前には泰麒の小臣を務めていた。』
(李斎 / 白銀の墟 玄の月)
この集められていた兵士(伏勝・午月)が『処刑が始まる前から正頼を警護していた』のか、それとも『泰麒&驍宗離脱後、慌てて正頼のもとに集められた』のか、その辺りは正確には分かりません。
というのも、泰麒&驍宗離脱後、巌趙が正頼の牢に辿り着くまでには多少の時間を要しているからです。(巌趙は奉天殿から泰麒の転変を目撃し、琅燦と会話をしてから地下牢に移動しているので。)
その間に阿選から「正頼の警護を厚くせよ」と命じられて、慌てて奉天殿から地下牢に移動した可能性はゼロではありません。
つまり伏勝と午月は処刑の際、
(1)正頼のいる地下牢 もしくは
(2)駹淑の視界に入らない奉天殿の隅にいたと考えられます。
▼妙に角張った細かな文字
伏勝は生粋の武人のため事務仕事が大の苦手でした。
もしも伏勝が手紙をはじめとした書類作成全般(文字を書くこと)に不得手だったのなら、玄管の『妙に角張った細かな文字』という特徴にも通じるものがあるのかな、と思います。
▼新王阿選を信じていなかった可能性
伏勝は唯一「阿選に対して本当はどう思っているのか分からない」阿選軍の主要人物です。
叔容・恵棟・友尚・成行・品堅・帰泉・烏衡・午月は、それぞれ阿選に対してどんな心情を抱いているか、戴の現状をどう思うか、新王阿選を信じているか……といったことが主体的に描かれてきました。誰かの憶測ではなく、キャラクター本人の独白として心理描写がされています。
しかし伏勝だけは『複雑な顔』としか描かれていません。目の前に阿選が現れても決して側に寄らず、ただただ複雑な顔を浮かべるだけ。
ということは、伏勝は最初から『新王阿選』を疑っており「この践祚は何かおかしい」と沐雨に青鳥を飛ばした可能性もあるわけです。
これがもしも「私がいなくなった後、阿選側にいる主公(伏勝など)のことを頼む」という意味だった場合、『正頼を逃すときに巌趙がその場に留まった理由』が微妙に変わってきます。
正頼は「追撃を防ぐため」と李斎や驍宗に説明したようですが、実際は『白圭宮に残る耶利の主公を守るためだった』と考えることもできます。(※考察というより妄想の域ですが。)
ただし伏勝=玄管=耶利の主公の場合、引っかかる点があります。1人称です。
伏勝の1人称は『俺』です。対して耶利の主公の1人称は『私』でした。
目上の人間でもない耶利に対してわざわざ『私』と一人称を変える必要性がよく分からないので、伏勝は耶利の主公ではありません。……多分。
皆白について
鴣摺 | 長天 | 李斎 | 奉天殿 | 兇賊阿選 |
---|---|---|---|---|
◯ | △ | △ | △ | ◯ |
元天官長で、鳴蝕の隙に出奔したとされている皆白。
普通に考えると皆白が玄管である可能性は0に等しいのですが、耶利が六寝を含む白圭宮内部に頻繁に侵入していたことから『皆白は白圭宮の奥に潜伏していた』と考えることもできます。
(皆白は鳴蝕が起きてすぐに姿を消しているため、阿選や張運の目を盗んで王宮の奥に潜むことは可能です。)
ただし
- 潜伏中の人間が会議を盗聴できるのか
- 潜伏中の人間が奉天殿に侵入できるのか
- 潜伏中の人間が巌趙に会いに行けるのか
- なぜ友尚麾下の長天に鴣摺を飛ばせたのか
──という疑問が浮かびます。
(※耶利が開拓した王宮の裏ルートを皆白が使っていた可能性はありますが)
また、耶利の主公は『複数の人を介し、なんとか私兵として紛れ込ませることができそうだ』と耶利に告げています。
嘉磬は皆白の右腕的存在です。
もしも耶利の主公が皆白だったなら、複数の人を介さずとも「うちの耶利をよろしく」と嘉磬に直接頼めば済む話だったわけです。
これが「恵棟が嘉磬を頼るよう、複数の人を裏で動かした」という意味であれば「複数の人を介し」という表現は微妙にそぐわない気がします。
ということで、皆白は耶利の主公ではないのかな、と。
津梁について
鴣摺 | 長天 | 李斎 | 奉天殿 | 兇賊阿選 |
---|---|---|---|---|
◯ | ○ | ○ | △ | ◯ |
津梁は凱州師出身で、驍宗失踪後に徴兵された兵士です。阿選の麾下ではありません。
彼(彼女?)は駹淑の元上司であり、とても優秀・有能な人間と評されています。
(王師編入後は烏衡の上司になっています。おそらく「可愛い麾下(友尚など)と下衆の烏衡を同じ配属にしたくない」という阿選の配慮により、強引に押し付けられたのでしょうね笑)
ただ、作中で本人が登場したことはありません。
そのため存在感が極めて薄く、最初は除外していたんですが……2巻で死んだ「謎の主公」の正体が「地の文でしか登場しなかった基寮」だったこともあり、候補としてあり得るな、と入れ直しました。(2020年1月7日)
津梁なら鴣摺を持つことが出来て、長天に鴣摺を飛ばせるのに李斎には鴣摺を飛ばせず、阿選を兇賊と罵ることが出来ます。
また、耶利は『さる人』の手で戴に預けられていますが、驍宗に預けられた訳ではありません。「見どころがあるから人の世界で勉強しろ」と十二国のどこかに送られ、阿選の謀反後に白圭宮に来た人物です。
耶利が白圭宮に来るまでの経緯は謎に包まれていますが、「耶利が最初に送られた先は凱州で、驍宗失踪後(阿選の謀反後)、王師に徴兵された津梁にくっ付いて王宮に来た」と考えると一応話の筋が通ります。
──ただし、津梁を玄管とするには厳しい点が3つ。
▼1つ目:最初の手紙
津梁には「瑞雲観を止めるよう手紙を出すことは出来ない」可能性が高いです。
玄管は6〜7年前に「瑞雲観を止めた方がいい。阿選は過激な誅伐でそれに応じるだろう」という旨の手紙を飛ばしています。つまりこの時点で玄管は阿選の行動を正確に読めているんです。
津梁が徴兵された時期は正確には分かりませんが、少なくとも駹淑の軍学卒業後であることは確定しています。駹淑は驍宗登極時に軍学への進学を決めていますから、少なくとも謀反直後に徴兵されたわけではありません。
いくらエリート家系出身で強運を持つ駹淑といえど、わずか半年〜数ヶ月で軍学を卒業できるものなのかが疑問ですね。
(半年で卒業していた場合、津梁が玄管として最初の手紙を出すことは一応可能)
▼2つ目:奉天殿での位置
津梁は禁軍の兵士です。
どこの軍に所属するのかは謎ですが、兵士である以上、成行軍や品堅軍と同様に奉天殿の外で処刑を見守っていた可能性は非常に高いです。
ただし奉天殿内部に複数の兵士が駐在していたことも事実ですから、津梁が奉天殿の隅にいた可能性は否めません。
(指揮官(将軍)不在の友尚軍なら奉天殿の隅を含む王宮各地に散らばっていても不自然ではないですし、津梁の元部下である駹淑が奉天殿内部の警備に充てられていたことから、「よそ者の津梁らを驍宗関係者に接触させないため」奉天殿内部で隔離されていた可能性は一応あります)
▼3つ目:驍宗との接点
耶利の主公は「玉座には驍宗様にいてほしい」と断言しています。
また、「耶利が泰麒について話す姿は、まるで驍宗様のことを話す麾下のようだ」と言われた耶利が感慨に耽っていることからも、耶利の主公は驍宗のことを(麾下までは言わなくても)個人的に慕っているように思います。
一方、津梁は驍宗失踪後に王宮に来ているので驍宗と個人的な面識はないはず。
もしかしたら基寮のように『津梁=かつて驍宗軍で働いていた驍宗の麾下』かもしれませんが、そうであれば阿選&張運は津梁を王師には呼びません。むしろ迫害対象にしたでしょう。
ということで、もしも「津梁=耶利の主公」だった場合に考えられるのは冒頭の『大前提』でも述べた「黄朱との繋がり」です。
「琅燦の次に黄海から送られた謎の黄朱」「黄朱と繋がりを持つ謎の関係者」が驍宗の下にいることは確定しています。
たとえば津梁が黄海出身の元黄朱で「驍宗に預けられたn番目の人物」だった場合、「玉座には驍宗様にいてほしい」と強く言うのも筋が通りますね。(黄朱だからといって全員が愛国心を持たない訳でもないでしょうし、黄海出身の元黄朱なら「優秀な兵士」として王師に徴兵されるのも頷ける)
他にも驍宗登極後、王の視察なり挨拶なりで凱州城等で密かに面会している可能性も一応考えられます。
つまり津梁は「阿選の知らぬところで驍宗と親しくなった」もしくは「津梁が勝手に驍宗に惚れ込んだ」可能性が否めないのです。
ということで「津梁=玄管」・「津梁=耶利の主公」を確実に否定する根拠はないですが、かといって断定するには根拠が弱い、微妙な立ち位置のキャラクターかな、と思います。
(今作のキーパーソンとなった基寮が限りなくモブに近い状態だった件を考えると、ある意味では津梁が一番玄管or主公の可能性が高いかもしれません)
まとめ
名前 | 玄管の可能性 | 主公の可能性 | 玄管=主公 |
---|---|---|---|
立昌(天官長) | ◯ | △ | △ |
哥錫(地官長) | ◯ | △ | △ |
懸珠(春官長) | △ | △ | △ |
叔容(夏官長) | × | × | × |
橋松(秋官長) | × | × | × |
? (冬官長) | - | - | - |
琅燦(太師) | × | × | × |
伏勝(司士) | △ | △ | △ |
皆白(元天官長) | △ | × | × |
津梁(禁軍) | △ | ○ | △ |
◯:そうかも △:否めない ×:違う |
ということで、
玄管=耶利の主公の場合、玄管は『立昌・哥錫・懸珠・伏勝・津梁』まで絞れるかな、と思います。
一方で伏勝は六官長の会議に忍び込むイメージがまるでなく、「本当に忍び込んでいたのか?」という疑問が残ります。
(「会議の場に現れた無名の下官が実は伏勝だった」可能性も否めないですが、なんとも言えませんね。)
津梁が玄管であれば大抵の条件をクリアしていますが、「津梁と駹淑は一体いつ王宮に来たのか」が分からないため微妙なところです。
玄管と耶利の主公が別人の場合
耶利の主公(A)と玄管(B)が別人の場合。
主公と考えられる人物は下記のとおりかな、と思います。
- 立昌(天官長)
- 哥錫(地官長)
- 懸珠(春官長)
- 津梁(禁軍)
-
臥信(元瑞州将軍)
巌趙の協力を得て、密かに王宮を出たり入ったりしていた……かもしれない。 -
英章(元禁軍将軍)
同上。
また、耶利の主公が上記の誰かである場合、伏勝が玄管である可能性が微妙に浮上します。
凱州出身の津梁も一応候補に追加しました。
以前の投稿記事も読んでくださった方にはややこしい変更になってすみません。
考察
立昌・哥錫・懸珠について
基本的には上の方にある『玄管=耶利の主公だった場合』と同じですね。
玄管と主公が別人だった場合、「そもそも主公は長天に青鳥を飛ばしていない」ことになるので、立昌・哥錫・懸珠の全員が耶利の主公になり得ます。
(同時に、かなり際どいですが『伏勝=玄管で、耶利の主公とは別人』説も一応成り立ちます。)
もしも立昌・懸珠のどちらかが耶利の主公だった場合、耶利が頻繁に六寝に侵入していたのは『主公の代わりに阿選を監視するため』もしくは『驍宗を探すため』と解釈することもできます。
(哥錫は六寝関係について作中では触れられていません。)
また、阿選は『冢宰府や六官府の中に間諜を置いていることが明かされています。これは阿選自身の独白で明かされているので確定事項です。
阿選に全く会えない『立昌・懸珠』は阿選の手下ではありません。故に、2人のいずれかが耶利の主公でもさほど不自然ではありません。
逆に『哥錫・叔容・橋松・冬官長』は阿選が用意したスパイである可能性が少なからずあります。
津梁について
※2020年1月7日に追記しました。
津梁も基本的には『玄管=耶利の主公だった場合』と同じです。
津梁と玄管が別人だった場合、瑞雲観の件や奉天殿の立ち位置を考えずに済むため「津梁=耶利の主公」を否定する要素が特に何もないことになります。
耶利の主公である可能性はそれなりに高いです。(今更ながら)
強いて言うなら、「兵士の津梁が私兵を雇うのはアリなのか」くらいでしょうか。(耶利は位の高い個人に雇われている状態であり、ほぼ私兵と同義)
無位無冠となった嘉磬や身を守る術のない官僚なら分かりますが、「元凱州師将軍が個人的に私兵を雇う」のは怪しすぎる気もしますね。張運はともかく、阿選や案作は黙っていなさそう。
臥信・英章について
驍宗の麾下であり、謀反発覚後は早々に潜伏した臥信と英章。
彼らは100%玄管ではないですが、「耶利の主公かもしれない」という可能性は微妙に残っています。
謀反直後 | 英章・正頼と結託して国帑を隠すことを取り決め、出奔。 |
---|---|
阿選政権時 | 藍州に潜伏。朱旌の取締役に匿われていた。 |
驍宗救出時 | 江州城を陥落し、驍宗を迎え入れた。 |
謀反直後 | 臥信・正頼と結託して国帑を隠すことを取り決め、文州で軍を解散。 |
---|---|
阿選政権時 | 馬州に潜伏。 |
驍宗救出時 | 白圭宮から江州城までの道を作り、驍宗を守った。 |
1巻にて『臥信は朱旌とも神農とも親しかった』と書かれています。
朱旌・神農はかなりの情報通です。現に臥信も情報通でした。(神農の鄷都曰く、「朱旌とも神農とも親しければ噂話は売るほど手に入る」とのこと。)
また、李斎は臥信を「用兵家としては傑物」「行動が読みにくい」と評しています。
『妙に細かい情報を持っていてとんでもない策をとる』
(李斎 / 白銀の墟 玄の月)
『臥信は奇計奇術の将だ。行動を読みにくく、油断がならない。それは英章も同様だったが、英章の陰に対し、臥信の詐術には奇妙な明朗さがあった。』
(李斎 / 黄昏の岸 暁の天)
耶利の主公について、
巌趙は「お前の主の考えていることは分からん」、耶利は「我々の理解が及ぶ方ではない」と言っています。
普通に読むとこの会話は『白銀(略)』における何らかの伏線と考えられますが、もしも耶利の主公が臥信もしくは英章だった場合、この会話文は新たな伏線ではなく、これまで(黄昏・白銀序盤)の伏線回収をしていたと考えることもできます。
(巌趙は耶利の主が持つ情報と判断力を信頼しています。その理由が「臥信は昔から恐ろしく情報通だったから」「長い付き合いだから」ならば一応筋が通りますね。)
※ちなみに臥信も英章も1人称は『私』です。(笑)
『巌趙のところまで辿り着ければ、項梁は王宮を抜け出すことができる。巌趙はこれ以前にもこうやって幾人もの官吏を逃がしてきた。』
(耶利 / 白銀の墟 玄の月)
──ということは、巌趙を通せば阿選に追われる身でも王宮内外の行き来が可能、と考えることもできます(こじつけに近いですが)。
また、禁門周辺の傀儡は耶利を認めていました。耶利が禁門周辺をうろつくことを容認しています。
『この傀儡は職務には忠実だ。禁門に近付く者を誰何しなければならないが、少女が誰でどういった者なのかは承知しており、誰何する必要がない、というだけのことだった。
(略)
少女が禁門の周囲を行き来することを許されていると知っている。だからああして魂が抜けたように佇んでいるが、そうでなければ問答無用に動き出し、機械のように侵入者を屠る。』
これが「禁門周辺の傀儡は巌趙の指示に従う」という意味であれば、「巌趙の協力さえあれば臥信・英章は白圭宮に入ることができた」とも考えられますし、「耶利は巌趙から騎獣を借りて国内を自由に飛び回れた=英章・臥信の潜伏地まで自由に行けた」と深読みすることも出来ます。
ただし、臥信もしくは英章が耶利の主公だった場合、主公の「私では巌趙の身柄までは動かせない」というセリフが気になります。
これはつまり「巌趙以外なら多少は動かせる」という意味に捉えられるので、阿選王朝に一切関与できない臥信・英章の言葉としては不自然です。これが『ある程度なら間接的に人を動かせる』という意味であれば、それはつまり耶利以外にも複数人の協力者・内通者がいることの暗示になります。
驍宗失踪後、一度も王宮に戻っていない英章がその協力者(おそらく嘉磬や玄管など)を確保するのは相当難しいでしょうから、英章が耶利の主公である可能性は限りなくゼロに近付きます。
一方で臥信は「正頼と一緒に国帑を隠す算段をつけた際、玄管や嘉磬とも協力関係を結んだ」と推測できますね。(本当にめちゃくちゃ強引な仮説ですが。)
候補としては「凌雲山にある廃れた道観(さすがに雲海の上には存在しない気もしますが)」あるいは「花影と結託して落とした(?)藍州城」でしょうか。しかしわざわざそんなところで密会する必要性が全く分からないので、臥信は耶利の主公ではないでしょう。多分。
(尚、巌趙の家は『禁門・厩のそば』とされているため雲海の下だと思われます。)
つまり李斎が散々ほのめかしていた「臥信と英章は行動が読みにくく、とんでもない策をとる」「臥信は恐ろしく情報通」といった数々の伏線は全て『江州城陥落』『白圭宮から江州城までの道を開くこと』『正頼と裏で繋がっていた協力者』に繋がるもので、それ以上でも以下でもない、と考えられます。
まとめ
(追記:2020.01.07)
ということで、耶利の主公は『立昌・懸珠・哥錫・津梁』の誰かかなと思います。
その上で「誰が一番耶利の主公である可能性が高いか」という観点でいけば、7年前の経歴や独自の登場シーンが描かれている立昌もしくはこれといって否定要素がない津梁が最も主公に近いと思います。(メタ的解釈&消去法なんですけどね)
微妙に皆白の可能性も捨てきれないんですが、「複数の人を介し、なんとか私兵として紛れ込ませることができそうだ」というセリフがどうにも引っかかるので何とも言えず。
仮に皆白が主公で立昌が玄管なら、『天官下人経由で元天官長の皆白と現天官長の立昌が協力関係になった』などの考察(※妄想)もできるなあ、と思ったりもします。その場合立昌が長天に鴣摺を飛ばせた理由は…………「長天から鴣摺を買い取ったから」とかですかね!(投げやり)
もっとも、深読みをせずストレートに読み解くなら泰麒の言うように『琅燦=玄管&耶利の主公』が一番シンプルに纏まるとも思います。
前述の通り『琅燦=玄管&主公』だと色々と引っかかる点もあるんですが、エンタメ作品として一番インパクトがあり、尚且つ分かりやすい"謎の人物の正体"は琅燦だろうな、と。(例えば後日談で「立昌が耶利の主公でした〜!」と明かされても「立昌って誰だっけ?」となる読者の方が多いと思うので笑)
感想(雑)
なにやら色々と書き疲れたので、途中から「もう誰が玄管で誰が主公でもええわ!」という投げやりな思考に浸りつつ。
個人的には『耶利の主公=臥信』『玄管=立昌or伏勝』の組み合わせが一番胸アツなんですけど、一番無理がある仮説だな、とも思っています(笑)
そんなことより「結局博牛はただの侠客だったの?」とか、「巌趙・耶利・琅燦・阿選の関係性」とか、「琅燦の次に驍宗に預けられた黄朱の正体」とか、「耶利を戴に送り込んだ『さる人』が誰なのか」とか、そういう別の疑問が沸々と気になり出したり。
次に発売される短編集では是非とも驍宗様と泰麒の平和な日常話を読みたいのですが、それと同時にこうした様々な謎が明かされるといいな、とも思います。
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