NAZU不正アクセス事件について 解説と考察

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【超ネタバレ】コナン映画『ゼロの執行人』を解説&考察! 専門用語や伏線、黒田の正

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NAZU不正アクセス事件とは

時は『ゼロの執行人』の1年前。
アメリカ航空宇宙局ことNASAをモデルにしたNAZU(ナズ)に日本人が不正アクセスをしました。
これがNAZU不正アクセス事件です。

犯人はハッキングシステムNor(ノーア)を使い、自分の身元がわからないよう細工してからNAZUを攻撃。
アメリカ合衆国は日本警察に捜査依頼を出し、この事件は公安案件になりました。
(この時点ではNAZUはNorのアクセスログを正確に辿る手段を持っていません)

無事に犯人を逮捕した公安警察は、思い通りの判決を出すため担当の検察官と弁護士に公安警察の協力者を使います。
それが公安検察の日下部と、弁護士の橘境子でした。

日下部検事 日下部誠

検察庁の公安部に所属する検事。
公安警察の指示通りに裁判を進めるのが仕事。

警察が提出した情報を精査するのが本来の検察官のあり方なのに、公安警察の言いなりになっている現状に不満を抱く。

境子先生 橘境子

弁護士。公安警察の協力者でもある。
公安案件となった刑事事件を担当し、被疑者が必ず有罪になるようにわざとポンコツな弁護をする。


羽場とNAZU事件の関係

NAZU不正アクセス事件の犯人逮捕後、羽場は独自に事件を調べ始めます。
犯人と繋がるゲーム会社『Z-Front』に事件の証拠が隠されていると考えた羽場はゲーム会社に侵入し、不正アクセスの証拠となるデータを盗もうとします。しかし公安警察に現場を抑えられ、その場で現行犯逮捕されました。
そして羽場の逮捕から数日後(おそらく逮捕の翌日〜翌々日)に留置所内で突然自殺。公安警察による取り調べ直後のことでした。

88231 羽場二三一

司法修習生時代、自分が裁判官になれなかったことに激昂して教官に詰め寄った。このことが原因で司法修習の資格を奪われ、憧れだった裁判官への道が閉ざされる。





日下部視点

日下部は羽場が司法修習生時代に暴走した現場を見ていました。
彼の「どうして僕が裁判官になれないのか!」という訴えを聞き、彼のように真っ直ぐな人間こそ正義のために生きるべきだと考えます。
そして公安検察である自分の協力者になるようオファーし、羽場と協力関係を結びました。

その後しばらくして、NAZU不正アクセス事件が起きます。

NAZU不正アクセス事件を担当していた日下部は、公安警察が用意した情報以外の証拠を羽場に探らせます。(公安警察の指示通りに動くのが嫌だったため。)

指示を受けた羽場は被疑者が頻繁に出入りしていたゲーム会社『Z-Front』に不正アクセスのデータが残っていると判断し、夜間に不法侵入してデータを盗もうとしました。
しかしデータを盗んでいる最中に公安警察が現場に現れ、羽場を現行犯逮捕します。

日下部は留置所の面談室で「私の命令だったと言え」と羽場に促しますが、日下部や検察庁の信頼を落としたくなかった羽場はそれを拒否。
そんな彼を救うため日下部は公安検察の違法行為を世間に公表しようとしますが、公安警察の言いなりになっている岩井検事により日下部の意見は却下され、NAZU不正アクセス事件の担当からも降ろされてしまいます。

どうにか羽場を助けようと警察に直談判をしに出向く道中で、岩井検事から羽場の自殺を知らされます。
最悪の事態に日下部は絶叫。
公安警察の取り調べの直後に自殺した事実から、「公安警察が違法で過激な取り調べを行い、羽場を自殺に追い込んだ」と判断します。
以来、正義のために汚名を被ろうとしていた羽場を自殺に追い込んだ公安警察を強く憎むようになります。

結果的に羽場を見殺しにした岩井検事のことも内心では恨んでいたでしょうが、殺意を抱くほどではなかったようです。
(彼女のスマホを爆発させたのは捜査を撹乱するため。彼女を傷付ける予定はなかった)


橘境子視点

橘境子は公安警察の協力者です。

境子は司法修習時のトラブルで路頭に迷った羽場を引き取り、事務員として雇用しました。
彼を雇用・監視することは公安警察の指示でしたが、監視対象だと分かっていても境子は羽場に惹かれ、自然と恋仲になります。

羽場が日下部の協力者であることを知らなかった境子は、彼がNAZU不正アクセス事件について調べていることも知らなかった。境子にとって羽場は善良な一般市民でしかなかったのです。
しかし羽場は窃盗罪等で緊急逮捕された後、拘置所で不自然な自殺を遂げました。
協力者だった風見に「羽場を助けてくれ」と訴えたものの、風見はその意を汲むことはなかった。(降谷が無断で羽場を殺したので、風見個人としては非常に心苦しかったと思います)

境子は普段こそ無能な弁護士を演じていますが、実際にはかなり優秀な人間です。(そうでなければ公安警察の協力者にはなれない。)
羽場の自殺が公安警察によるものだと察した境子は、「協力者として信頼していたはずの公安警察に裏切られた」と感じたはずです。それでいて彼らは何食わぬ顔で境子を利用し続けている。(※風見は心苦しかったと思います!!!)

境子は公安警察に強い恨みを持つようになり、彼らに反逆することを企てます。

境子は公安警察への復讐方法に「裏切り」を選びました。
公安警察が黒にしたい人間を白に、白にしたい人間を黒にするのが境子なりの復讐です。

そしてやってきたのが毛利小五郎の逮捕劇でした。
公安警察は小五郎を無罪にするため境子に指示を出しますが、境子は小五郎が有罪になるよう動きます。





降谷・公安警察視点(仮説)

羽場の自殺には降谷零の様々な策略が絡んでいるのではないか、とする仮説です。

前提:NAZU不正アクセス事件が起きる前から橘境子と公安警察は協力者関係にありました。

パターン羽場を監視するため

〜 映画内で説明されている公式設定 〜
公務員に準ずる身分(司法修習生)でありながら暴走した羽場を公安警察が危険視。犯罪者予備軍である羽場を橘境子の弁護士事務所に送り込み、羽場の監視を依頼。

境子を通じて羽場を監視していた降谷は、羽場が密かにNAZU不正アクセス事件を調べていることを知る。そしてそれが日下部の指示であることを推理。
羽場がゲーム会社に侵入するのを見越し、風見らを現場に派遣させて現行犯逮捕をした。(日下部の暴走を止めるための強硬手段)

羽場の逮捕後、ようやく降谷は羽場と1対1で密談。「検察官が協力者に違法行為をさせたと世間に公表したくない」のは羽場も降谷も同じで、そこに付け込んだ(?)降谷は羽場に自身の協力者となることを提案。了承した羽場の身柄を保護し、彼を社会的に抹殺する。

パターン日下部を監視するため

〜 ほぼ妄想 〜
公安警察に不満を抱いている日下部を危険視した公安警察は、日下部をマークするため羽場を用意した。
羽場を通じて日下部の動向を伺っていたものの、「やはり日下部ら検察官には違法作業を完遂する能力がない」と判断。
日下部の協力者となった羽場を保護するため逮捕する。

羽場が公安の協力者でない場合

日下部の性格からして羽場を協力者に雇う可能性が高いと踏んだ(あるいは羽場と日下部が協力者関係にあると知った)公安警察は、羽場・日下部を監視するため自分の管理下である橘境子の元で羽場を働かせる。

羽場が公安の協力者だった場合

羽場はトラブルを起こす前から公安の協力者であり、日下部と繋がるためわざと暴動を起こした。
そして降谷の目論見通り羽場は日下部の協力者となり、彼の動向を公安警察に報告。二重スパイならぬ二重協力者だった。(※仮説です)


パターン橘境子を監視するため

〜 脚本家の櫻井さんならやりかねない裏設定説 〜
公安警察の協力者である橘境子は、公安を勝利させるため「ダメ弁護士」で居続ける必要がある。しかし敗訴を重ねれば重ねるだけ彼女は弁護士としての信用を失う。
「ダメ弁護士」であるせいで通常の仕事が来なくなった彼女はより一層公安警察からの依頼に頼らざるを得なくなり、それが彼女のストレスになると降谷は予測。

ストレスを抱えた境子が公安警察を裏切らないよう、降谷は橘境子を監視する目的で羽場を送り込んだ。
(羽場は司法修習生時代から降谷の協力者だった)

境子が公安警察に刃向かう兆候があれば羽場に報告させる。さらに境子の抑止力となるため、羽場と境子を恋人関係にさせた(ロミオトラップ)。

この可能性に気付いたからこそ、境子は映画終盤で「羽場と公安警察はいつから協力者だったのか(羽場の協力者番号は一体何番なのか)」と知りたがるのです。そして降谷と風見は彼女の質問には答えず、沈黙

そして最後に境子は「(たとえ仕組まれたことでも)羽場を好きになったのも私の判断」と涙ながらに主張し、羽場と決別するのです。

映画を素直に観ているとこんな発想にはならないのですが(笑)、脚本家が脚本家だけになあ〜、とひねくれたことを考えていました。あり得る。

羽場の生存を隠した理由

降谷は羽場の生存を徹底的に隠しました。

その理由は「公安検察が二度と協力者を作らないため」です。
日下部は協力者の扱いに失敗し、羽場の不法侵入罪さえ撤回することができませんでした。そしてその尻拭いをしたのが公安警察です。
「羽場が生きている」と日下部ら検察側に伝えれば、「失敗しても公安警察が何とかしてくれる」と考える検察官が出てきて第二、第三の協力者が生まれる可能性があります。そして違法行為だけが蔓延し、協力者が危険な目に遭うだけでなく、検察庁や国家への信頼が落ちていく。

降谷はそうした可能性を潰すため、羽場の生存を徹底的に隠しました。

その結果がテロ事件と毛利小五郎の起訴なんですけどね!
脚本家の櫻井さんは降谷をヒーローのように扱う一方で、公安への皮肉も描いているように思います。