【超ネタバレ】コナン映画『ゼロの執行人』を解説&考察! 専門用語や伏線、黒田の正体etcについて考える
© ゼロの執行人
『ゼロの執行人』の登場人物や専門用語をまとめました。
原作、映画ともにネタバレがすごいので嫌な人はご注意ください。
スタッフ・関係者
原作:青山剛昌
名探偵コナンの作者。
「IoTテロを題材にしたい」という櫻井さん(脚本家)の提案に対し、「じゃあ安室を出さなきゃ」と安室透の出演を決めた第一人者。
安室と梓のコストコでの会話を一字一句全て担当。
また、どうにかして「僕の恋人は……」というセリフが入るよう監督にお願いしたり(笑)、様々な場面の絵コンテも担当した。
監督:立川譲
アニメ制作会社マッドハウス出身。現在はフリーランスのアニメーション監督・演出家・脚本家。
作画が凄い、面白いと話題になったアニメ『モブサイコ100』の監督。
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脚本:櫻井武晴
テレビドラマ『相棒』や『科捜研の女』などの脚本を務めるベテラン作家。
コナン映画でも『業火の向日葵』や『純黒の悪夢』などの脚本を担当したが、前監督の方針もあり今作とは作風がけっこう異なる。
音楽:大野克夫
長年に渡りコナンの音楽を担当されている方。
映画ごとにメインテーマ(「俺は高校生探偵工藤新一!」に繋がる曲)をアレンジされている。
イメージボード:loundraw
イラストレーター兼漫画家・小説家。
降谷と風見が雨の中で会話をするシーンなどを担当。
Twitter
主題歌:福山雅治
楽曲『零-ZERO-』を提供。
本作の影の主人公・降谷零を主観的に表現した。
あらすじ
舞台は架空の東京都。
『東京サミット』の直前、会場内で大規模な爆発が発生。
サミット会場の下見をしていた警察官や工事関係者が爆発に巻き込まれ殉職した。
サミット会場の爆発が起きた次の日、毛利小五郎が公安警察によって強引に逮捕されてしまう。
これについて「国を守るために犠牲が出るのは仕方ない」と言わんばかりの公安警察・安室透の態度にコナンは激怒。
爆発事故の真相を探るとともに、安室透という男について考えていくことになります。
登場人物
江戸川コナン
(CV:高山みなみ)
主人公。
高校生探偵・工藤新一が幼児化した姿。
幼馴染の毛利蘭とは(工藤新一が)恋人。
安室のことは信頼しており、たびたび正体を隠す気がないような素振りを見せる。
実はけっこう口が悪い。
安室透
(CV:古谷透)
私立探偵。毛利小五郎の一番弟子。
喫茶ポアロでアルバイト中だが、その正体は警察庁の潜入捜査官である。
誰にでも優しく・爽やかで・礼儀正しく・紳士的な好青年。
観察眼が非常に優れており、記憶力・推理力も抜群。しかし小五郎の推理ショーが始めるまで基本的には黙っている。
本名は 降谷零 。
バーボン
(CV:古谷透)
黒の組織の探り屋。徹底した秘密主義者でもある。
ベルモットから「組織随一の切れ者」として称されるほど優秀。
本名は降谷零。
降谷零
(CV:古谷透)
国家公務員。キャリア組。
(現実のキャリア組とは色々事情が異なるがその辺はご愛嬌)
警察庁警備局警備企画課・通称『ゼロ』に所属する公安警察。
ちなみに降谷の子供の頃のアダ名も『ゼロ』。
黒の組織を壊滅させるためバーボンとして潜入捜査を行っている。
また、憎き赤井秀一に近づくため安室透として毛利小五郎(コナン)にも接近中。
コナンが只者でないことを悟っているがあくまで賢い子供として認識している。
映画内の時間軸では江戸川コナン=工藤新一には辿り着いていない。
このときはコナンの正体にはあんま興味がないんやな
降谷の幼馴染で親友の潜入捜査官・スコッチ。
彼はすでに他界していますが、スコッチを自殺させたのはFBI捜査官・赤井秀一だと降谷は考えている。(※当時の現場の状況、赤井の言動から降谷がそう推理するのはおおよそ正しい)
降谷にとって「赤井秀一=大切な幼馴染の命を奪った上、それを利用して組織に食い込んだアメリカ野郎」となっており、スコッチの命を奪った赤井のことを殺したいほど憎んでいる。
また、降谷にとって「赤井秀一を組織に差し出すこと(組織の人間の前で殺すこと)」は赤井がスコッチにしたことと全く同じで、それこそがスコッチの仇討ちだと思っている節がある、と思う。
子供の頃、降谷のことを「ゼロ」と読んでいたのはスコッチ。
©小学館
警視庁公安部の潜入捜査官。
降谷とは同い年の幼馴染で親友。警察官としては同期でもある。
降谷と共に黒の組織に潜入し、「スコッチ」というコードネームを獲得していた。
ある日突然スパイであることが組織にバレたため、自身の情報が漏れる前に赤井の拳銃を奪って自殺。
遅れて現場に到着した降谷はスコッチの遺体と彼を見下ろす赤井を目にする。赤井から「俺がスコッチを殺した」という旨を伝えられるが、遺体の様子から自殺であると瞬時に悟り、赤井の嘘を見抜く。
当時の降谷は赤井のことを「優秀な男」として認めていた。そしてスコッチの死後1年〜3年後、彼が自分と同じスパイでアメリカの警察官(FBI捜査官)だったことが判明する。
赤井とスコッチは国籍こそ違えど警察官同士であり、組織を倒したい仲間でもある。それなのに赤井はスコッチを助けなかった。「あれほど優秀な男がなぜスコッチを助けてくれなかったのか」という失望と、「赤井はスコッチをむざむざと見殺しにした上、彼の死を利用して組織に食い込んだ」と憎しみを持つようになる。
(なお、降谷はスコッチの死の真相を知らない。)
風見裕也
(CV:飛田展男)
地方公務員。警視庁の公安部に所属。
降谷の命令に忠実に動く。
かなり真面目で仕事熱心だが隙が多い。
小学1年生のコナンにペラペラと口を開いてしまうあたり、第二の高木刑事になりそうな男。
黒田兵衛
(CV:岸野幸正)
警視庁の管理官。
表向きの階級は降谷零とほぼ同等。つまり同じくらいの偉さ。
(それくらい警察は国家公務員と地方公務員で待遇に差がある)
ただし、明らかに降谷・バーボンいずれかの上司であることがこの映画のミソ。
(映画の台本に記載されているためバーボンで確定)
安室をバーボンと呼んだことから「組織のNo.2ラムではないか?」という疑惑がある。
が、今回の映画で黒田は公安警察の裏理事官であることが確定しました。
映画内で降谷は「公安から刑事部に情報が流れることは裏理事官は知っている」と言っています。
本作の中でわざわざ”裏理事官”という言葉を出したということは、登場人物の中に公安の裏理事官がいる、ということです。
また、黒田は会議中の大臣に直接耳打ちしています。本来「捜査一課の管理官」は大臣に耳打ちするほどの役職ではありません。
つまり降谷が言っていた「裏の理事官」というのは黒田のことで間違いありません。
ということは黒田は降谷のトリプルフェイスを知っている人間ということになります。(降谷、安室、バーボンすべてを把握している)
一応黒田がラムである可能性(裏理事官との2重スパイ説)もまだ残っていますが、ひとまず「公安警察の偉い人」というのは確定。
橘境子
(CV:上戸彩)
弁護士。
弁護士事務所を持たないケーベン。
羽場の死後、公安警察に復讐するため弁護士事務所を畳んでケーベンになった。
「そもそも勝てるはずがない」と言われる公安検察が行う刑事事件のみ扱っている。そのため全敗。
その正体は公安警察があらかじめ用意していた協力者である。
毛利小五郎の無罪を立証するため風見から指示されていたが、羽場を自殺に追い込んだ公安警察を嫌悪していたため風見の指示とは真逆となる小五郎の起訴に向けて画策する。
初対面の蘭が境子に「勝率はどれくらいなんですか?」と訊ねるシーンがあるが、そこから分かるように弁護士にとって勝率はビジネス上とても大事なもの。
しかしわざと負け続けている境子は、世間一般から見れば 無勝のダメ弁護士 でしかない。
(実際に「一度も勝ったことがないの」と笑ったとき、コナンと蘭は呆れ顔をしている)
これだけでも精神的苦痛があるはずなのに、信頼していたはずの協力者(公安警察)のせいで恋人が自殺した、と分かった時の彼女の心境を思うと苦しい。
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一般的な弁護士
例:妃弁護士 -
タクベン
自宅を弁護士事務所代わりにして働いている弁護士のこと。
例:毛利小五郎の弁護士ver -
ケーベン
拠点を持たず、携帯電話だけで依頼を受ける弁護士のこと。
例:安室透の弁護士ver -
国選弁護人
弁護士を雇うお金がない人などを担当する弁護士のこと。
どんな人でも必ず弁護を受けられるように国が制定している。
日下部誠
(CV:川島得愛)
検察官。
協力者の羽場を自殺に追い込んだ公安警察を憎んでいる。また、公安検察が公安警察の言いなりになっていることにも強い不満を抱いている。
警察が出してきた捜査資料を精査し、冤罪や余罪がないように丁寧に調べ上げるのが検察の仕事。
その結果「逮捕された人間に罪がある」と検察が判断した場合は起訴をし、裁判所で罪を求めます。
岩井紗世子
(CV:冨永みーな)
検察官で日下部の上司。
公安警察の指示通りに動く検察官。
元々は日下部の同期だったが、NAZU不正アクセス事件以降日下部を抑えるため公安的配慮で昇格した。
羽場二三一
(CV:博多大吉)
「自分こそが裁判官にふさわしい」と信じていた男性。
司法修習生の頃、裁判官に不採用になったことに納得ができず声を荒げて教官に詰め寄ったため司法修習の資格を失った。
司法修習時のトラブル後、路頭に迷った羽場は公安警察の協力者である橘境子の弁護士事務所で働くことになる。
日下部は羽場のことを「誰よりも正義感が強い男」と解釈し、自分の協力者として秘密裏に雇う。羽場に違法行為(NAZU不正アクセス事件の調査)をさせていた。
これを知った公安警察は「公安検察には違法行為の始末をつける度量がない」と判断。
降谷ら公安警察は羽場を逮捕し、密かに彼の身を保護した。
検察官とは法律のエキスパートであり、本来はそれ以上でも以下でもない。
公安警察を真似して安室透のような潜入捜査を協力者(羽場)にさせても、協力者が凶悪犯罪や法律の危険に晒された際、検察官(日下部)には協力者を守る術がない。
一方で安室・スコッチ・赤井などの潜入捜査官は皆特殊な訓練を積んでおり、警察組織による専門のサポートを受けている。安室ら公安警察にとっては一般人に過ぎない検察官が、個人的な判断で違法作業をするのはあまりに無謀で危険すぎる、ということ。
一方で公安警察は羽場を社会的に抹殺したものの、彼に起こりうる様々な脅威から身を守りました。
一見すると「勘でわかるだろ!」と言いたくなるような安直なパスコードですが、アメリカのNAZU職員はもちろん警視庁、防衛省、その他政府関係者は羽場の存在を知りません。
羽場のことを知っているのは降谷ら公安関係者だけなので、現場にいる彼らがパスコードを解除するのは不可能です。
全ての事情を知っていた降谷もまさかこんな安直なコードが使われているとは夢にも思わないでしょうし(笑)、いちいち推理して試行錯誤するよりも本人から直接聞き出した方が早いです。ということで降谷の行動はあれが最善手でした。
毛利蘭
(CV:山崎和佳奈)
ヒロイン。
正義感が強く、誰にでも優しくて温和。空手の鬼。
家族をとても大切に想っている素直な子。
毛利小五郎
(CV:小山力也)
元警視庁捜査一課の刑事。現在は私立探偵。
目暮警部ほどではないが、それなりに機械音痴。
妃英理
(CV:高島雅羅)
蘭の母親・小五郎の妻。無敗の敏腕弁護士。
料理がおそろしく下手で、その味に耐えかねた小五郎と喧嘩になり別居した。
栗山緑
(CV:百々麻子)
英理の弁護士事務所で働く秘書。
明るい性格で優秀。英理をとても慕っている。
ゴロちゃん
英理の飼い猫。ロシアンブルー。
名前は小五郎の「ゴロ」から来ている。
榎本梓
(CV:榎本充希子)
喫茶ポアロの看板娘。明るい性格でよく笑う。
安室のことをイケメンと認めつつ恋愛感情は全く抱いていない。むしろ変に誤解されたくないと思っている節がある。
灰原哀
(CV:林原めぐみ)
黒の組織の元幹部で天才的な科学者。
薬学、物理学、システム開発などに通じている秀才(ただし作品内では全く注目されていない)。
本名は宮野志保。新一と同様の薬を飲み幼児化した。
阿笠博士
(CV:緒方賢一)
工藤邸の隣に住んでいる天才発明家。
サミット会場の爆発が起きる直前(映画では未収録)に少年探偵団を通じて「優れた発明家がいる」と安室に目をつけられた。
少年探偵団
吉田歩美・円谷光彦・小嶋元太・江戸川コナン・灰原哀の5人組。
阿笠博士の家に入り浸り、ゲームをしたりお菓子を食べたり好き勝手に過ごしている。
(博士もそれを歓迎している模様)
目暮十三
(CV:茶風林)
警視庁捜査一課の警部で小五郎の元上司。
小五郎を信頼しており、爆発事件は冤罪だと信じていた。
佐藤美和子
(CV:湯屋敦子)
警視庁捜査一課の刑事。
小五郎を信頼しており、爆発事件は冤罪だと信じていた。
白鳥任三郎
(CV:井上和彦)
警視庁捜査一課の警部。
小五郎を信頼しており、爆発事件は冤罪だと信じていた。
※おそらく降谷と同じキャリア組と思われるが年齢不詳のためよく分からない。
高木渉
(CV:高木渉)
警視庁捜査一課の刑事。
他のどの刑事よりもコナンと親しく、もはや友人の域。
いつ頃からか事件の捜査情報をペラペラと喋るようになった。
登場する専門用語
IoT(アイオーティー)
Internet of Thingsの略称。
『モノのインターネット』の意味で、身の回りの物がネットに繋がりネット上で制御できる仕組みのこと。
(炊飯器をネットに繋いでスマホからタイマー予約をする等)
東京サミット
東京で開催される主要国首脳会議のこと。
各国の大統領などが東京に集結する一大イベント。
コナンの世界では5月1日に米花町で開催される予定だった。
東京都限定の警察。
「警視庁」という名前から勘違いされがちだが、要するに地方公務員である。
18歳から採用される他、学力試験も一般企業のSPIと同レベルで比較的簡単。
(ただし警視庁は首都を警護することから他の都道府県よりは難易度が高い)
交番にいる警察官がこれに当たる。
日本を束ねる省庁の1つ。
採用されるには国家公務員試験に上位合格した上で警察庁を訪問し、厳しい面接を受けて内定を勝ち取らなければならない。
(内定=採用ではない。また、東大卒レベルの学力は必須。)
国家公務員として各省庁に採用される中でもトップクラスの難易度で、知識量に加えて様々な経験や技量が必要。
交番勤務は3週間ほどしか経験しない。
国家の治安を揺るがす反逆者(テロ、過激な宗教活動、過激な右翼・左翼の活動など)に対抗する警備警察。
例えば国民の選挙で選ばれた総理大臣に対して「気に入らないから殺そう」などという暴力の正義が許されないよう活動している。
そういった特別な事情から「存在しないものであれ」という意味を込めて『ゼロ』と呼ばれている。
(現実の公安が『ゼロ』と呼ばれていたのは過去の話で、現在の俗称は別の"何か"になっている)
警察が逮捕した人を引き取り、裁判所で公訴するかどうか審議する機関のこと。
簡単に言えば警察は「逮捕するまで」が仕事で、検察は「裁判で刑罰を求めるまで」が仕事。
弁護士や裁判官と同じく、検察官になるには司法試験に合格する必要がある。
被告人(容疑者)の弁護をする人。
検察が求める刑罰(懲役10年など)に対し、減刑(懲役5年に引き下げる)や無罪を主張するのが仕事。
弁護士・検察官・裁判官になるための研修期間のようなもの。
難関な司法試験を合格した者しか参加できない。
なお、研修中は公務員に準じた身分になる。
逮捕された後の流れ
逮捕
犯罪者に対し、裁判所の許可を得てから警察が拘束すること。
毛利小五郎に対しては裁判所の許可を得ていない現行犯逮捕が適用された。
(風見に掴まれた腕を振り払う=公務執行妨害で現行犯逮捕)
送検
警察が逮捕・勾留している人を検察に送ること。
(検察に送る=略して送検。)
送検は「容疑者」を「犯人」として確定するための第一歩。
起訴
逮捕された人を裁判にかけること。
殺人やテロ行為などの刑事事件の場合、起訴されると 99.9% 有罪となる。
現実世界のNASAのこと。
宇宙など航空技術の開発をしているアメリカの連邦機関。
人工衛星の管理なども行っている。
現実世界の Tor(トーア) のこと。
パソコンの遠隔操作システムのことで、簡単に言えばハッキング用のシステム。
岩井検事は今回の事件を担当する当事者です。Norのログを解析する際の参考資料には必ず彼女のスマホが使われると踏み、これまでに起こしたIoTテロやサミット会場爆破、人工衛星のハッキングなどの犯人像をダミー端末の方へと誘導させました。
詳しい考察はこちら
考察
ポアロ前でのセリフ
小五郎が公務執行妨害で現行犯逮捕された直後、コナンはポアロの店先で安室と対峙します。
このときの安室のセリフがこちら。
これは「小五郎は無罪だ」というコナンの言い分に対して、「無罪の証拠がないからコナンの話には付き合わない」という拒絶の意味と、「犯人は分からないが自分はテロ事件だと思っている。しかし証拠がない以上、警察は自分の話に付き合ってくれない。そうするとテロの犯人を捕まえられない。だから毛利小五郎が犯人だという証拠を捏造し、真犯人を捕まえるまでの時間稼ぎをしている」という自分が所属する警察という組織への皮肉にもなっています。
安室の違法作業について
犯人に対して安室が言った、
というセリフ。
これに対して安室が行った違法作業は「小五郎の逮捕」と「コナンのスマホの改造」です(道交法違反やビルの破壊はさておき)。
安室は「毛利小五郎が犯人である」という証拠を揃えつつ、それを覆すだけの準備も同時に進めていました。(そのために橘境子を協力者として使っていた)
つまり小五郎を有罪にするつもりは最初からなかった。小五郎の逮捕に対して自らの力でカタをつける準備は整えていました。
(エンディングでは贖罪といわんばかりにハムサンドを納めてましたね笑)
また、盗聴のために行った「コナンのスマホの改造」に関しても盗聴アプリが仕込まれていることは外見上は分からず、かつ公安(安室)がそれを行った証拠は一切残していません。
コナン自身も「公安が盗聴した証拠はない」と言っているため、安室が映画内で行った違法作業を違法と立証するものは何もない。つまり自分の力でちゃんとカタを付けている(※とても強引)のです。
黒田管理官について
警視庁捜査一課の管理官、黒田兵衛。
前管理官の松本清長が警視正に昇進したことから黒田が管理官になりました。
表向きの黒田兵衛はノンキャリア組。
管理官とはいえ降谷と同格のポジションです。
(目暮警部や白鳥警部は降谷よりも階級が下)
……が、実際には降谷の上司であることが映画内でわかりました。
※公開されている脚本にはしっかりとバーボンと記載されています。
バーボンという発言から「ラムの正体は黒田ではないか?」とも推測できますが、彼は公安の裏理事官です。
降谷零を安室透に仕立て、黒の組織に送り込んだ張本人が黒田兵衛だとすれば潜入捜査中の降谷に戒めを込めて「バーボン」と呼ぶのも理にかなっています。
さらに「黒田は公安の裏理事官であり、なおかつラムでもあるのではないか?」との推測も可能です。
つまり黒田は組織と警察の二重スパイ。まさにトリプルフェイスというわけです!(笑)
(※何のためにそんな野暮ったいことをしてるのかよく分かりませんし、散々「ラムは一体誰だ!?」と煽ってきたのに結果がコレでは拍子抜けするので個人的には99%違うと思います。)
降谷の「怖い男」について
降谷と風見が2人きりで話す場面で、降谷はこんなことを言います。
1人は江戸川コナンで確定です。
映画の時間軸では安室(降谷)にとって江戸川コナンはただの7歳児。それなのに自分と同じテンポで会話ができ、時に自分よりも賢く、時に予想外な方法で正義を貫くコナンのことが恐ろしくもあり眩しくもあるんですね。
確かにこんな規格外の人間がまだ小学1年生でしかないのは普通に考えてとても怖いと思います(笑)
そして気になるもう1人ですが、可能性としては2人の人物が挙げられます。
赤井秀一説
黒の組織が「シルバーブレット」として恐れる唯一の人間です。
降谷が親友・スコッチの仇として追い続けている男でもあります。
ただ降谷にとって赤井は「憎らしい」という感情こそあれど、「怖い」対象にはならないと思います。
バーボンとして活動中も「赤井を殺せるのは自分だけだ」と周囲に豪語しているくらいなので(笑)、「自分より怖い」というのは違うかなと。
黒田兵衛説
正体不明の男、黒田兵衛。
ラム説、公安のボス説、二重スパイ説など様々な憶測がある人間です。
(今回『ゼロの執行人』で公安警察の裏理事官であることが確定。)
青山さん本人が「この映画は黒田を出せたことに大きな意味がある」と言っているので、黒田が裏理事官であることは青山さんも納得の上での公表でしょう。
また、黒田の真の正体が何であれ相当な実力者であり頭の切れる男であることは確実です。
そんな男が降谷の命を握っていることも事実なのです。
ということで個人的には降谷の言う「僕以上に怖い男」というのは黒田のことかなと思います。
身分を偽り、周囲を欺き、何らかの目的のために突き進む黒田の正体をおそらく降谷は知っています。彼が悪役ならば「素直に怖い」でしょうが、個人的には黒田は「白で確定」だと思っています。
正義のために多くのものを犠牲にして突き進む黒田のことを、羽場は生きていると知った風見が降谷に抱いた「怖い」と同じように「畏怖の意味で怖い」と言ったのでしょう。
岩井検事のスマホを爆発させた理由
IoTテロ発生時に少し遅れて岩井検事のスマホが爆発しますが、これは日下部の偽装工作です。
公安警察にしか恨みのなかった日下部は、善良な一般人である毛利小五郎の誤認逮捕が許せなかった。そこで彼を救うため、Norを使ってIoTテロを起こします。
「IoTテロの犯人とサミット会場を爆破した犯人は同一人物である」と一般の刑事に勘付かせ、「警察・検察の監視下にあった毛利小五郎には犯行が不可能である」と判断させることが目的でした。
また、「Norを使えば小五郎のパソコンに犯行計画書を仕込むことができる。犯人はNorを使って小五郎を囮にした(本当は降谷が勝手に仕込んだのですが)。つまり小五郎は無罪である」と捜査を誘導したのです。
このとき日下部は「Norを使えば絶対に足がつかない」と思っていました。
(Norのバグを使った場合に足が付くことは知っていた)
犯人のNorに関する知識は1年前のNAZU不正アクセス事件で止まっていたためです。
しかしNAZUは不正アクセス事件以降、Norに対抗するシステムを開発していました。
刑事部が毛利小五郎のパソコンのアクセスログを解析するようNAZUに依頼したことで、日下部は初めてNorの脆弱性を知ります。
良かれと思って行ったIoTテロにより自分の首を絞めてしまったことに気がついた日下部は、捜査を撹乱するためNorのバグを使ったダミー端末(NAZUに依頼しなくても個人を特定できる。日下部の個人情報が入っていない端末を囮にした)で岩井検事のスマホを攻撃します。
『サミット会場爆破事件』を担当する岩井検事のスマホを攻撃することで、アクセスログの解析対象を「一般人の電化製品(自分の痕跡あり)」から「関係者のスマホ(自分の痕跡なし)」にすり替えました。
犯人はできるだけ一般人に被害が出ないよう、狙いは公安警察だけに絞っていました。しかし毛利小五郎を救うためには公安警察が揉み消せないほど大きな事件を引き起こす必要があった。
最初こそ正攻法で毛利小五郎の冤罪を訴えていましたが、公安の息がかかった上司(と公安に刃向かう橘境子)に揉み消されてしまいます。
そこで仕方なく公安とは無関係の刑事にも分かるように、Norを用いた大規模なIoTテロを起こしました。公安以外の誰かが、毛利小五郎の冤罪に気付いてくれることを信じて。
(実際にはコナンだけが犯人の思惑に気が付いたわけですね。笑)
境子が羽場の番号を知りたかった理由
境子は羽場が生きていることを知りませんでした。
そのため羽場と公安警察が繋がっている可能性など全く考えていなかった。
しかし羽場の生存を知り、羽場と公安が繋がっていたことを知ってしまいます。
そして「彼は何番なの?」と羽場と公安警察の協力者番号を知りたがります。
コナン世界の公安警察は、協力者を全て番号で管理しています。そしてその番号は協力者になった順に割り振られる。
境子の番号は2291ですから、羽場の番号がこれよりも小さければ羽場はトラブルを起こす前から公安の協力者だったということになります。
つまり自分が羽場を好きになったのも、羽場の恋人になったのも、すべては公安警察の計算だったのではないか?と疑ったわけです。
結局映画内では羽場の番号は分かりませんでした。真相は闇の中です。
しかし境子は「公安の協力者になったのも羽場の恋人になったのも、(たとえ最初から仕組まれていたとしても)最後は全て自分の判断」「私の人生すべてを操れると思わないで」と涙ながらに主張しています。
脚本家の櫻井さんはわりと警察組織に厳しい人なので、裏設定としては十分にあり得るな…と思いました。
公安・降谷への皮肉
『ゼロの執行人』は降谷零を陰のヒーローとして扱う一方で、公安警察への皮肉が込められた作品でもあると思います。
降谷ら公安警察は「協力者」を手駒として用意し、常に自分たちに有利な状況を生み出していました。
-
公安警察の協力者
- 橘境子(弁護士)
公安警察が重い罪を与えたい人間の弁護を行う。
わざと負けることで公安警察が望む刑罰を与えていた。 - 岩井紗世子ら公安検察
公安警察が重い罪を与えたい人間の検事を担当する。
必ず勝つことで公安警察が望む刑罰を与えていた。 - 羽場二三一
日下部検事の元協力者。
いつから公安警察の協力者だったのかは不明。
本来、警察組織と法曹界(裁判官・検察官・弁護士)は全く別の組織です。
涙ぐましい努力で法律を学び、世のため人のためを思って法律のエキスパートになった彼らにとって、警察官にこき使われるのは屈辱でもあったでしょう。
(少なくとも日下部にとってはそうだった。)
それに加えて羽場の死を偽装し、隠し続けていたことが今回のテロ事件(日下部)や小五郎の起訴(境子)に繋がっています。
どう考えても今回の事件は羽場の死を捏造し、彼の生存を関係者にも黙っていた降谷のミスです。
降谷はバーボンとして活動している弊害か、はたまた29歳にして大切な人を失いすぎたせいか、それとも公安の仕事に慣れすぎたのか、とにかく「大切な人が誰かのせいで死んだら人間は一体どんな感情を抱き、どんな行動に出るのか」を失念していました。
(日下部も境子も公安関係者なので油断していた可能性も大いにありますが。)
自分が赤井に抱いている殺意や復讐心を棚に上げて、降谷は日下部と境子の感情を無視してしまった。
同じ公安警察である風見でさえ、羽場を自殺させた降谷を「人殺し」と陰で呼んでいたのだから、風見よりもよっぽど羽場と親しい関係だった日下部と境子のフォローをするべきでした。
『ゼロの執行人』からは「公安は国益を最優先にするせいで個々人の感情を蔑ろにし過ぎている」「これは公安警察にとって因果応報の事件である」という皮肉なメッセージを感じます。
汚い真似をしてでも日本を再優先に守るのが公安警察の仕事。実際、公安の仕事は何の罪もない人を傷付けることが多いのでしょう。
だからこそ「存在しないもの(ゼロの呼び名の由来)」として国が扱っている。
しかし降谷は仕事のために個人を使い捨てるのではなく、たとえ自分が悪者になってでも最後には必ず個人を守り抜けるように、と動いているのです。
(降谷が実際にやり遂げられているかは別として、彼の理想はこれ)
ちなみに公安は自分の意思では配属されません。100%上からの指示です。
エンディングで安室が小五郎にハムサンドを贈っていましたが、あれは身分を隠した降谷零なりの個人的なお詫びでしょうね。
(誤認逮捕の詫びがハムサンドというのも微妙ですが笑、普段と違うことをして変に疑われるわけにもいかないので降谷なりの妥協点だったのでしょう)
感想
小五郎はもっと怒っていい!
「ったく、しゃーねーな」みたいな感じで終わっていましたが、弟子だと思っている安室に冤罪をかけられ長期間拘束されていた小五郎があまりに哀れで(笑)
それはさておき、
降谷が誰よりも早く日下部の犯行と動機に気付けていれば良かったなあ、と思ったり。
青山さんが脚本を書いたわけではないので何とも言えませんが、降谷も日下部も「赤井(公安警察)のせいでスコッチ(羽場)が自殺した」という全く同じ構図の恨みを胸に秘めていたのだから、降谷は日下部の気持ちが痛いほどよく分かったはず。
降谷零として日下部に寄り添う(謝罪する)姿勢があれば面白かったなあ、と少し思いました。
あとは安室が愛車のRX-7を他人の車に思いっきりぶつけたシーンと電車の壁を走るシーンには笑いました。かっこよかったですけどね!
原作でもベルモットから「目的のためには手段を選ばない男」として警戒されていますが、そりゃ警戒もされるわと(笑)。
おまけにラストシーンではコナンと安室が互いに何の相談や準備もなく、当然のようにビルの上層階から車ごと落下していましたが「仲良しさんか?」とツッコミたくなりましたね!笑顔で恋バナをした直後に捨て身の落下ですよ。
ついていけない!!! 死ぬわ!
さて。
今回の脚本は『相棒』などを書いているベテラン脚本家の櫻井さんということで、刑事ドラマ色がとても強かったですね!
強いて言うなら新一と蘭のラブコメが控えめだったのが個人的に少し残念。
もっとやっちゃっていいんですよ!!!
櫻井さんは『業火の向日葵』や『純黒の悪夢』なども手掛けていますが、「櫻井さんが青山さんと一緒に用意したミステリー部分を静野監督が丸ごと全部アクションに変更しまった」という噂もあるくらいなので(笑)、同じ脚本家でもかなり系統の違う作品になりました。個人的には『業火の向日葵』等よりこっちの方が好きです。
また、監督の立川さんは「作画がすごい」「よくまとまってる」と好評だったアニメ『モブサイコ100』の監督でもあります。今作の大ヒットには作画が良かった点も絡んでいるのではないかな、と思いました。
さらに立川さんは原作者の青山さんの要望をできるだけ取り入れるよう尽力していて、だからこそ青山さんのイメージに近い安室が描かれている、と思うと原作ファンとしては嬉しかったです。
ありがとうございます!!!
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