【感想】天才が主役のペダンチックなハードSF (ランドスケープと夏の定理 / 高島雄哉)

感想

SFの有名新人賞『創元SF短編賞』受賞作の『ランドスケープと夏の定理』を読みました。
「ハードSFなのに文系でも読みやすい!」という噂通り、読みやすくて面白かったです。




あらすじ

地球随一の天才物理学者である気の強いに、なにかにつけて振りまわされるぼく。大学四年生になる夏に日本でおこなわれた「あの実験」から三年、ぼくはまたしても姉に呼び出された。向かった先は宇宙空間──ラグランジュポイントL2に浮かぶ国際研究施設だ。姉はそこで誰にも知られることなく、宇宙論に関するある途轍もない実験を準備していた。

第5回創元SF短編賞を受賞した表題作にはじまる全三話。瀬名秀明が「日本SFの歴史を次の五十年に受け渡す傑作」と激賞した、新時代の理論派ハードSF。
(引用:東京創元社)

犬
INU

文系にとって理解不能な専門用語も大量に出てきますが、「意味が分からなくても大丈夫」という親切設計でした

読み方は2種類

この『ランドスケープと夏の定理』には2種類の楽しみ方があります。

99円の電子書籍版

まずは99円〜で読める短編の電子書籍版。

『創元SF短編賞』を受賞したのはこの短編です。
正直、99円でこの話を読めるのはかなりお得。むしろ作者さんに申し訳ないレベルですね。

犬
INU

電子書籍に抵抗のない人、受賞作だけサッと読みたい人はこの99円版でも十分楽しめると思います

▼AmazonのKindleでは99円ですが、他サイトでは110円ほどのようです。
もしかしたら時期によっても値段は変動するかも。

ハードカバー版

次にハードカバー版。


こちらは99円版と同じ短編(受賞作)に加えて、続篇が2つ収録されています。

ハードカバー版は『1つの長編SF小説』として楽しむことができるので、一気に読破したい人、物語を深く楽しみたい人、紙で読むのが好きな人はハードカバーで読むことを強くオススメします。




感想

まず感じたのが「ハルヒかな……?」でした(笑)
いやストーリーなどは全然ハルヒじゃないんですが、世界トップレベルの頭脳を誇る天才で奔放な姉と、とことん姉に振り回される常識人な弟という構図がどうにもハルヒとキョン……( °꒳° )

まあそれはさておき、
序盤からペダンチックな文体でSFの世界に引き込まれるのがとても気持ち良かったです。

ペダンチックというと批判的な意味を持ちがちですが褒めています。
──というのも、(文系なので偉そうなことは言えないんですが)感覚的にこの本の物理的・数学的要素はフィクションの色合いがとっっても濃い気がしたからです。
下手したらハードSFというより『100%ファンタジーのライトノベル』に転びそうな世界観というか。でも『読みやすいハードSF』として、しっかり成り立っている。
この絶妙な世界観を作り出しているのは、巧妙に散りばめられた専門用語や造語のおかげかな、と。
犬
INU

学園が舞台の青春小説で『量子力学の云々カンヌン』が披露され続けたら困りますが(笑)、舞台が宇宙なので全然問題ありませんね

個人的にとても面白かったのは主人公ネルスの『知性定理』あたりですね!
ネタバレになるので「詳しくは本を読んでください」としか言えないのですが、「生物には共通の言語がある」というくだりはロマンで溢れていて、すっごくワクワクしながら読みました。
本を読みながらリアルタイムでワクワクしたのは久しぶりだったなあ。

とにかく、総じて面白かったです。

ただ1点だけ、ちょっと引っかかったのが某登場人物の恋愛的な描写でした。
『恋愛要素を出すことで1人の人格として確立している』というのは分かるんですが、『男女の親愛=恋愛』に結びつきがちな作品が個人的にあまり好きではないので……(笑)、そこだけちょっと私の好みではなかったかな。

でも本当に文系人間でも楽しめましたし、サクサク読めて面白かったです。
SFに興味のある人にはぜひ。

感想